ウェルビーイングスコア開発の背景
- 労働生産性とウェルビーイングに関する研究では、従業員のウェルビーイングが労働生産性の向上につながる可能性が示唆されました。
- しかし、従業員一人ひとりのウェルビーイング、そしてそれらを総合した企業のウェルビーイングを包括的に測定する方法はいまだに確立されていません。
- そこで本研究では、従業員向けアンケート調査の回答を用いて、労働生産性の向上につながるウェルビーイングスコアを開発しました。
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ウェルビーイングスコアの概要
- 「ウェルビーイングスコア」は2つの手順で算出します(図表1)。
手順1
従業員向けのアンケート45項目の回答をもとに「領域スコア」を算出します。
「領域スコア」とは、 企業の発展と従業員のウェルビーイングの実現を支える8つの要素を測定した点数です。
①健康風土、②働きやすさ、③仕事の充実、④働きがい、⑤人生観、⑥生きがい、➆心身の健康、⑧生活習慣
手順2
8つの領域スコアをもとに、その総合得点である「ウェルビーイングスコア」を算出します。 - スコアを算出する際に、SPQ presenteeismと関連が強いアンケート項目や領域には重みづけをします。
アンケート項目や領域スコアごとに、労働生産性に与える影響の大きさは様々です。
そこで、スコアを単純に足し合わせるのではなく、「ウェルビーイングスコア」「領域スコア」の改善が労働生産性の向上につながるように、重みづけをして総和を算出します。
ウェルビーイングスコアと企業属性
- 主に中小企業のウェルビーイングスコアの平均値・標準偏差を提示します。
- 従業員数が少ない企業ほど、ウェルビーイングスコアが大きい傾向がありました。
(企業数9,434社、延べ従業員数38万人)
- 算出ロジックの通り、ウェルビーイングスコアが高い企業ほどSPQ presenteeism(労働生産性の損失)が小さい傾向がありました。
従業員のウェルビーイングと1年後の人材採用·定着
研究目的・方法
- 「ウェルビーイングスコア」が高い企業は、人材の採用力や定着率が高いでしょうか。
- そこでまず、2023年と2024年に、従業員のアンケート回答がある企業480社(従業員数50人以上)について、2023年の企業のウェルビーイングスコアを計算しました。
- そして各社のウェルビーイングスコアをもとに、企業480社を高スコア群、中スコア群、低スコア群に等分し、2023年と2024年の従業員数の変化を比較しました。
なお、従業員数は各年の健康習慣アンケート実施前に企業から提出された情報を用いました。
結果・考察
- ウェルビーイングスコアが高スコアの企業群は、低スコアの企業群と比較して、1年後に従業員数が増加した割合が6ポイント大きく、かつ1年後に従業員数が減少した企業の割合が7ポイント小さい結果でした。
- ウェルビーイングスコアの高さが、1年後の人材採用・定着につながる可能性がありました
- したがって、企業が健康経営の実践を通じて、従業員が健康で生き生きと働く職場をつくることは、人手不足の解決につながることが示唆されました。
従業員のウェルビーイングと企業業績
研究目的・方法
- 「ウェルビーイングスコア」が高い企業は、企業業績が高い傾向が見られるでしょうか。
- そこで、企業の「ウェルビーイングスコア」と、帝国データバンク社の調査データ「売上高」を企業単位で紐づけ、3つの企業群に分けて2024年度の従業員一人当たりの売上高を比較しました。
- なお、3つの企業群については、「その他」の企業群の業種構成に合わせて、それぞれ500社を無作為に抽出しました。
「高スコア」の企業群:ウェルビーイングスコアが中央値以上
「低スコア」の企業群:ウェルビーイングスコアが中央値未満
「その他」の企業群:ウェルビーイングスコアが紐づかなかった企業
結果・考察
- 「高スコア」の企業群における従業員一人当たりの売上高の中央値(24百万円)は、「その他」の企業群(20百万円)と比べて有意に高いことが確認されました。
- さらに「高スコア」の企業群(24百万円)は、「低スコア」の企業群(23百万円)と比較して、従業員一人当たり売上高(中央値)が高い傾向にありました。
- したがって、企業の健康経営の取り組みを通じてウェルビーイングスコアの改善を図ることが、企業の業績拡大につながる可能性が示唆されました。
※ウェルビーイングスコアの中央値は60.1点。
※統計的有意水準は5 %として、ボンフェローニ補正の多重比較を実施。
(出典)村松賢治, 井出博生, 古井祐司「企業のウェルビーイングスコアと売上高の関連に関する横断研究」第99回日本産業衛生学会
